なぜ、富裕層は「現金払い」より「ローン払い」を好むのか?
お金を銀行に預けていても少しも増えないことは誰もが痛感していると思いますが、逆の見方をすると、お金を借りるには最高の状況と言えます(マイナス金利の導入により各種ローンの利息にしわ寄せがくる可能性は残ります)。
たとえば、現在、住宅ローンの金利も1%を切るなどかなり低い水準にあるので、賃貸住宅に住み続けるよりも、いっそのことローンを借りて購入してしまったほうが結果的に安く済む可能性も出てきています。
お金を借りる行為は保有資産以上のお金を動かせるということですから、一種のレバレッジをかけているのと同じです。個人レベルでもビジネスレベルでも、積極的に攻めるときは、許容リスク内でのレバレッジは欠かせません。
お金を増やすための基本は「元本を減らさずに、いかにお金が増える仕組みをつくれるか」です。手元の現金に手をつけず、低金利で借金ができるのなら、それを利用しないのはもったいないとの考え方にも一理あります。
私が東南アジアで華僑の大富豪を担当したときのこと。
当時からアジアの資産家には東京の不動産は人気の投資先で、「東京のとある物件を買いたいので手伝ってくれ」と依頼を受けたのです。
こうした需要があるにもかかわらず、日本の銀行は実に保守的で、外国人というだけでローンを断ることが多く、融資が下りたとしても日本人とは比べものにならないほどの高金利を取ります。しかし、それでは利益が生まれません。
そういった事情を説明した上で、「キャッシュであれば売り主も承諾していただけるそうですよ」と伝えると、ものすごい剣幕で怒られたのです。
「不動産をキャッシュで買うわけないだろう!キャッシュを使うなら他のことに使ったほうがいい!」
これが、このような資本を活用して資本を生み出せる人たちの考え方なのです。
ローンを後ろ向きに考えるのは利息が生じるからですが、借りたお金で利息を上回る収益を得られるなら、ローンは「敵」から「味方」に変わります。
個人の資産運用でもこの考え方は多用されています。
たとえば、ドルキャリー取引や円キャリー取引と呼ばれるものは低い金利コストでお金を調達し、高金利で運用して利ざやを狙います。
また、海外のプライベートバンクのクライアントは、株式や債券投資の際に、現金ではなくて株式や債券自体を担保にしてお金を借り、さらに株や債券を買ったりします。
いずれも「背伸び」をしてお金を生み出しているのです。
一般人の感覚では「余剰資金がない自分たちには投資はできない」と思いがちですが、それは現金を伴う投資の場合ではないでしょうか。
こんな発想をしてみることもできるかもしれません。
たとえば、大企業に数年以上勤めるサラリーマンの方なら与信(金融機関から見た融資する際の信用)が高いので、中古のワンルームマンション投資のための購入資金として2000万~3000万円程度であれば、数百万円程度の頭金を用意すれば借りることは難しくないでしょう。
これも個人のB/Sに載っている無形資産と考えることができるでしょう。大企業に勤 めていることで無形資産が積み上がったという考え方であり、これは優良な企業のほうがよりよい条件で融資を受けられることと同じです。
もしくは、最新のPCを買おうと思い、一括で買えるお金を貯めるべきか、ローンを組むかを考えたとします。その際、そのPCを買うことで本体価格と利息を合わせた額以上に収入が増えると想定できれば、ローンで買ったほうが賢い選択になるのです。
一括払いにこだわることが機会損失につながりはしないか、というところまで考えるクセをつけるのは大事なことです。
無責任なことは言いたくはありませんが、やはりお金を本気で増やしたいなら、資金が乏しかろうが、資金が潤沢だろうが、ローンなり担保なりを使ってリスクの許容範囲で「背伸び」をし、キャッシュがキャッシュを生む状況をいち早くつくり出すことが重要だと思います。
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