ラノベ作家が、知り合いの専門学校で小説を書く訓練として『ガンダム 水星の魔女』の第一話を生徒さんにノベライズさせた原稿を見せてもらった話
知り合いの専門学校の先生が、小説を書く訓練として『ガンダム 水星の魔女』の第一話を生徒さんにノベライズさせたという原稿を見せてもらった。
翻案などは無し、純然と第一話の冒頭シーンを『小説として』描いた場合にどうなるか、というもの。
まぁ当然と言えば当然だけど、あちこち抜けがある。
— 榊一郎@漫画『聖戦勇戯』『仁科君の編集冒険記』(原作担当)連載中! (@ichiro_sakaki) February 22, 2023
その抜けも多層的で、確かに生徒さんがいきなり書けと言われて書けるものではないが、逆にその抜けを指摘していくと、『冒頭で何を提示しないと読者は小説の世界に入れないのか』がわかる。
— 榊一郎@漫画『聖戦勇戯』『仁科君の編集冒険記』(原作担当)連載中! (@ichiro_sakaki) February 22, 2023
なかなか興味深い試みだけど、まぁ専門学校一年目の生徒さんにノベライズ(それもガンダムの)は無理というか、無理だからこそ、学びが得られる訳だけども。
— 榊一郎@漫画『聖戦勇戯』『仁科君の編集冒険記』(原作担当)連載中! (@ichiro_sakaki) February 22, 2023
スレッタの一人称で書かれているのは良いとして、このせいでまずスレッタの外見イメージが提示されない。一人称の場合は鏡に映った自分を描写したりするが、それも無い(アニメにそういう表現が無いので当然だが)
ここでもう完全第三者視点のアニメと、スレッタの一人称視点の齟齬が出る。
— 榊一郎@漫画『聖戦勇戯』『仁科君の編集冒険記』(原作担当)連載中! (@ichiro_sakaki) February 22, 2023
スレッタの視点なので当然、モビルスーツという言葉も出てこない、単に『エアリアル』だが、この場合もエアリアルの中のスレッタの視点ではモビルスーツの外観も描けないし、何より、『それが当然』の世界に生きているスレッタの視点ではいちいちモビルスーツの説明も無い。
— 榊一郎@漫画『聖戦勇戯』『仁科君の編集冒険記』(原作担当)連載中! (@ichiro_sakaki) February 22, 2023
つまり、ガンダムのノベライズであるのにガンダムの描写が無い。その一方でエアリアルからの注意喚起のピープ音?に対してスレッタが『電子音』と描写しているのがあるが、スレッタはそれを『電子音』と言うだろうか?
彼女なら『エアリアルが呼んでる』と言わないか?— 榊一郎@漫画『聖戦勇戯』『仁科君の編集冒険記』(原作担当)連載中! (@ichiro_sakaki) February 22, 2023
仮にこのノベライズをアニメより先に読むという場合。
スレッタの一人称は描きやすいのは事実だが、ガンダム、しかも独自設定がてんこ盛りの代物について、一人称で書いていくと色々説明すべきものが抜けるし、一方でそこでスレッタにちまちま説明させると、話が動かないし、不自然にもなる。— 榊一郎@漫画『聖戦勇戯』『仁科君の編集冒険記』(原作担当)連載中! (@ichiro_sakaki) February 22, 2023
こうなると三人称で書いた方が実は楽、という見方も成り立ってくる。特にキャラクターの内面が複雑で回を追うごとにその心理が明らかになっていくタイプの話である場合は、それを踏まえて一人称を書かないと齟齬が出る。
— 榊一郎@漫画『聖戦勇戯』『仁科君の編集冒険記』(原作担当)連載中! (@ichiro_sakaki) February 22, 2023
まぁ細かい話に見えるかもしれないが、その辺も押さえて書くのが小説の『演出』でありそれができるのが『本職』の物書きである以上は、その辺、『自分が出来ていない』自覚を持ってもらって、学んでもらうしかない、という話になる。
おそらくその先生もその辺を狙ってやらせてる。
無知の知というか。— 榊一郎@漫画『聖戦勇戯』『仁科君の編集冒険記』(原作担当)連載中! (@ichiro_sakaki) February 22, 2023