外出自粛中の米国で思わぬ理由で小麦粉が枯渇する珍事が発生 日本でも似たようなことある
行動が規制される中でできることを楽しむ米国、現地在住記者がレポート
世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス(COVID-19)。感染拡大中の米国に在住する「THE ANSWER」編集部の記者が、コロナ禍の現地の実情をレポート。そこには、規制の中でも楽しむことを忘れない米国の人々の姿があった。
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多くの州で、外出禁止令に当たる「Stay at home order」が出された米国。私の住むバージニア州では、10日(日本時間11日)時点で新型コロナの感染確認者数が4000人を超え、死者も100人を上回っている。その数字は毎日のように大幅に増え、収束の見通しどころか、ピークさえ迎えていない様子だ。
八村塁が所属し、ワシントンに本拠地を置く米プロバスケットボール(NBA)のウィザーズは、3月11日にNBAの延期が決まってから活動を休止中。会場で取材していたコーチや選手たちも、今はSNS上でその姿を眺めるだけだ。
NBAをはじめ、スポーツなどほぼ全てのイベントが中止となり、学校も休校。飲食店はテイクアウトのみか、臨時休業。その煽りを受けて職を失う人も増えており、大きな問題となっている。
バージニア州では外出禁止令により、薬局で薬を買ったり、必要な食糧をスーパーマーケットで調達したり、エクササイズのためにウォーキングやランニングをしたりといった必要最低限以外の外出は認められていない。
自宅からリモートワークをする人も増え、家で過ごす時間が増えた今、米国ではスーパーから小麦粉が消えた。
暇を持て余した人々が一斉にパンを焼き始める
その奇妙な現象は、私の自宅近くのスーパーでも起きている。普段は気にすることさえない小麦粉の棚が、すっかり空っぽに。外出禁止令が出る前の3月29日に、小麦粉を求めて5つのスーパーに足を運んだものの、どこも売り切れていた。この現象は現在も続いている。
なぜ急に小麦粉が品切れを起こしているのか。それは、人々が一斉にパンを焼き始めたからのようだ。自宅で暇を持て余した人々が、退屈しのぎにパンを作り始め、その材料の小麦粉が今、入手困難になるほど売れている。
私の妻も例外ではなく、普段はパンを焼くことのない人間だが、急に焼き始めた。友人たちも、学校が休校中で家にいる子どもたちとパンを作っているという。小麦粉が品切れになるほど、パンを焼く人が急激に増えるというのは、にわかに信じがたい。しかし、パン作りに欠かせないイーストもスーパーから姿を消したのだから、信じざるを得ないだろう。
そんな、思わぬ“ベーキング・ブーム”にあやかってか、いくつかのパン屋がインスタグラムのライブ機能を使って、“バーチャル・ベーキングクラス”を実施。人気を博しているという。こうした「ライブ機能」を使ったイベントは、今米国で話題の一つだ。
“バーチャル・ハッピーアワー”が人との距離を縮める
家にいながら参加できるイベントが人気急上昇中の米国。米紙「ニューヨークタイムズ」は、同紙のYouTubeアカウントでカクテルの作り方などを紹介するライブイベントを開催。“バーチャル・ハッピーアワー”と題して、アルコール片手に楽しめるコンテンツを配信した。
メディアだけでなく、個人レベルでも“バーチャル・ハッピーアワー”は人気。お酒を飲みながら友人との雑談を楽しむ人が増えている。さらに、私の知人などは“バーチャル・ハッピーアワー”で、近状報告も兼ねて学生時代の友達と旧交を温めることもしている。新型コロナにより、人と距離をとることが推奨されている現状が、一部では皮肉にも人々の距離を縮める機会となっているようだ。
私のように、幸いにも新型コロナに感染していない者が、家で健康に過ごせるのは、一つには医療従事者の献身的な働きがあるからだ。今、SNS上で医療従事者が出勤する際に、近所の人々が玄関先から拍手を送る動画がいくつも投稿され、反響を呼んでいる。私の自宅付近でも実際に行われ、近所の住民がバルコニーや窓から献身への感謝を示し、周辺は拍手の音で包まれた。
感染確認者数が急増していること、感染の危険がありながらも働かなくてはいけない人が数多くいること、失業などで生活環境が急に変化したことでストレスに苛まれる人が増加していることは、毎日報道されている。目に見えない敵だからこそ、不安は大きい。しかし、そんな状況下でもできる範囲で楽しみを見つけ、辛抱強くこの難局を乗り越えようとする姿が、ここにはある。
4/11(土) 10:03配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200411-00110721-theanswer-spo
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