韓国の家計・企業・政府の全てが資金を使い果たす緊急事態に突入 資金枯渇の中でコロナ危機が直撃
韓国で1人が生産した財貨とサービスの付加価値を示す1人当たり国内総生産(GDP)は2019年に3万1754ドルで2018年の3万3346ドルに比べ約5%減少した。国内総生産と類似の概念だが平均生活水準に近い1人当たり国民総所得(GNI)もやはり3万2047ドルで2018年の3万3434ドルに比べ4%減った。すなわち、ドル換算の1人当たり経済活動と国民所得は2019年に大幅に減少した。
昨年のドル換算の国民所得そのものが減ったことも衝撃だが、今年は状況がさらに悪い。特に1-3月期は新型コロナウイルスでマイナス成長の可能性を見せ、ウォンの価値も不安定で今年もドル換算の1人当たりGDPとGNIは2年連続で減少する可能性が大きい。1990年代以降で2年連続減少したのは1997~98年の通貨危機と2008~09年の金融危機程度だ。また、韓国経済の実質GDP成長率は2017年の3.2%から2019年は2.0%に大きく下落したが、1990年代以降通貨危機と金融危機を除くと2.0%水準まで脅威を受けた時はなかったため国民が感じる厳しさは切実だ。
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◇企業の営業利益半減で財政パンク
企業の厳しさも同様だ。KOSPI上場企業(金融業除外)の2019年連結基準業績によると、2018年に比べ売上額は0.47%増でほとんど増加できなかった。営業利益は37.04%、純利益は52.82%減と大幅に減った。金利が低く資本費用が急増することもなく、生産者物価上昇率も0.0%なので中間財価格上昇の余波もない。このため労働費用問題が企業の利益を損ねた可能性が大きい。
韓国経済を牽引した輸出も大きな打撃を受けた。新型コロナウイルスの影響が本格化する前にも費用増加にともなう国際競争力低下と半導体など主力産業不振が重なり関税庁の通関基準で輸出は2019年に10.4%減少した。金融危機以降10年ぶりの2桁の減少だ。
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ところが問題は家計と企業だけでなく政府も使えるお金がないということだ。2019年に政府が得た税収は政府が目標に定めた歳入予算に比べて不足し、2014年から5年ぶりに欠損が発生した。2018年から最高法人税率を22%から25%に引き上げたが、企業の業績悪化により税率引き上げにもかかわらず計画された法人税収を確保できなかったためだ。特に譲渡所得税と勤労所得税、相続贈与税、付加価値税を歳入予算より多く確保したことを考慮すると、国民が体感する租税負担は増えたが政府が得た税金はむしろ不足しているのだ。
したがって税金引き上げが「金の卵を産むガチョウ」の腹を割く状況にならないよう経済活動を萎縮させずに税収を確保できる適切な税金策定と支出予算編成が重要になっている。景気悪化と所得減少により今年政府が得られる税収はさらに減るだろう。実際の経済成長率そのものも低くなっただけでなく、その数値の大部分が政府支出に関連する。
韓国銀行の資料によると2019年の経済成長率2.0%のうち民間は4分の1程度の0.5ポイントを占め、その3倍となる1.5ポイントは政府部門で寄与した。政府支出が膨張して財政赤字が大きくなり2020年の管理財政収支はGDP比4%を超えると予想される。通貨危機直後に大規模財政が動員された1998年の4.7%の赤字以降で最も大きい幅だ。すなわち、家計や企業だけでなく政府も使うお金がない状況で新型コロナウイルスの衝撃にさらされたのだ。
◇政府の無理な政策ですべてが厳しく
賃金のような主要価格変数に政府が無理に介入する過程で市場メカニズムと乖離した政策を遂行した結果、家計と企業どちらも厳しくなり、これに伴う景気不振圧力を緩和しようと財政を支援する過程で政府負担まで極めて大きくなったのだ。結局、家計と企業、政府のいずれも使う所は多いがお金がない状況だ。これを解決するためには需要と供給により価格が決定される市場経済メカニズムの原則に再び戻らなければならない。
特に民間分野中心に競争力を確保して景気を引き上げるしかない。政府もやはり財政拡大を通じて景気浮揚をすべきなのは大きな枠組みで正しいが、すでに財政負担が大きく増加した現状ではもう少し焦点を定めた支援に集中する必要がある。すべての人にまんべんなく支援する方法は効果が小さく持続も難しく財政に負担となり、長期化の可能性がある危機状況では対応実弾を減少させるだけだ。本当に厳しい社会的弱者、そして今回の新型コロナウイルス問題で予期せず直撃弾を受けた部門・産業の労働者と企業支援に集中することが必要だ。
ソン・テユン/延世大学経済学部教授
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2020.04.07 09:44