「韓国人客が減っても実はそれほど困らない」と観光関係者が次々と酷評 客単価が増えて増収となった所も
観光庁は18日、韓国からの訪日客が7月以降、5カ月連続で減少したと発表した。日韓関係改善が見通せないなか、今後も減少が続く可能性が高く、政府が掲げる観光客数目標に悪影響を及ぼすのは確実だ。ただ、韓国人客は滞在日数が短いため、もう一つの目標である観光客消費額への影響は限定的だとの見方もある。観光や消費の現場ではすでに、東南アジアや欧米客向けの営業を強化するなど、多角化を図る動きも出始めている。
20人前後が乗る「どんこ舟」で60年以上の歴史がある水路「掘割」を巡る川下りや、ウナギのせいろ蒸しが人気の福岡県南部・柳川市は近年、観光客の増加に沸いていた。平成29年の訪日客は、統計が残る昭和44年以降最多の141万人を記録。国・地域別では、ここ2年は韓国からが最多となっていたが8月以降、急減した。
それでも、同市観光課の担当者は「韓国以外の外国人観光客の動きはそれほど変わっておらず、市全体として、『とても困っている』という状況ではない」と語る。
九州と並んで韓国人客からの人気が高い関西でも、百貨店の売上高は減少。訪日客による売り上げの大半を占める中国人客の消費が、人民元安の影響などで落ち込んだからだ。阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オーリテイリングでは11月の売上高が、阪急うめだ本店(大阪市)で前年比5・8%減、阪神梅田本店(同)で同6・6%減となった。
ホテルニューオータニ大阪(大阪市)は、9~11月の客室稼働率が前年同期比で約1・6ポイント下がった半面、1室当たりの客室単価は1千~2千円上昇し、増収となった。韓国人客は「室数ベースで6割減っているが、もともと宿泊客に占める割合は数パーセント程度で、影響は少ない」という。年末年始も全体の売上高は前年を上回る見通しだ。ただ、日韓関係の悪化を背景に、同ホテルは「特定の国・地域に依存するリスクは分散させる必要がある」として、タイやベトナムなど東南アジア諸国での営業を強化している。
一方で、滞在日数が長く消費額も大きい欧州からの訪日客の呼び込みを活発化させる動きも出ている。
全日本空輸は、来年3月29日からの新ダイヤで、羽田空港発着の欧州路線を拡大。欧州の発着都市数は、北米や中国とほぼ同数になる。平子裕志社長は「消費額で期待できるのは欧州や豪州からの訪日客と考えており、(新路線就航で)政府の消費額の目標に貢献できる」と胸を張った。
すでに韓国人客以外で盛り上がる観光地も。海鮮食材や果物の食べ歩きができる黒門市場商店街(大阪市)は、今夏までは韓国人客に人気の観光スポットだったが、様変わりしている。韓国人客は7~11月にかけてピーク時の1~2割まで減少したが、今秋開催のラグビーワールドカップ以降は、欧米など他地域からの訪日客が目立っている。同商店街組合の吉田清純副理事長は「幅広い地域からお客さんを受け入れるため、態勢の整備や情報発信を進めたい」と語る。
韓国人客減少について、福岡商工会議所の藤永憲一会頭は、「苦しい企業、地域もあるだろうが、マクロ的に見れば大きな影響はない」とみている。(大坪玲央、中村雅和、山本考志、田村慶子)
https://www.sankei.com/economy/news/191218/ecn1912180039-n1.html