「このまま輸出規制を続ければ日本は韓国に負ける」と朝日新聞が泣き喚く 日本製と同等の品が出来つつある
半導体の製造に欠かせない「フッ化水素」。政府が韓国向けの輸出規制を強化した物質で、ほとんどの金属を溶かす。超高純度のものは大阪の2社が市場を独占してきたが、韓国も国産化に向けて動き出した。日本の優位は保てるのか――。
フッ化水素とはどんな物質なのか。東京・豊洲の芝浦工業大学を訪ねると、田嶋稔樹教授(フッ素化学)が「ふっ化水素酸」とラベルが貼られた樹脂製の容器を見せてくれた。強烈な酸性で、皮膚につくだけでも体内に取り込まれ、成人男性なら1~2グラム摂取するだけで死んでしまうという。「実験で使うときは手袋を3重にし、フタを開けるときは専用マスクもします」
この物質が半導体の製造に使われるのは、ほぼすべての金属を溶かす特性を持つからだ。半導体はシリコン製の基板に金属などの薄い膜を塗り重ねてつくる。例えば、不要な部分をレーザーで焼き付けてフッ化水素をかけて取り除くと、回路が浮かび上がってくる。
最先端の半導体は回路幅が10ナノメートル以下。フッ化水素に少しでも不純物があると洗浄しきれず、ショートの原因になる。韓国の半導体メーカーが使う純度99.9999999999%(9が12個並ぶため「12N」という)の製品を安定的に作れるのは、ステラケミファと森田化学工業(いずれも大阪市)。2社は100年以上前に創業し、ノウハウを積み上げてきた。
量産には配管やバルブ、タンクを全て溶けない材料でつくり、容器に詰める際に不純物が入らないようにする技術も必要という。ステラケミファの担当者は「どれ一つ欠けても高純度ではなくなる。だから参入への壁は高い」と話す。
ただ日本が7月に輸出規制を強化してから、韓国企業も超高純度化に取り組んできた。関係者によると、日本製とほぼ同等のものが半導体の生産ラインに投入されつつあるという。関係者は「(韓国側は)背に腹はかえられないということで、使い始めたようだ。日本製のシェアは戻らないかもしれない」とみる。
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かつて半導体は「産業のコメ」とされ、日本の経済成長を支えてきた。今では韓国勢が市場を席巻しているが、素材や装置メーカーは競争力を保っている。
日立製作所で半導体部門のトップを務めた牧本次生さん(82)は、1986年に結ばれた日米半導体協定が転機とみる。当時は日本の家電が飛ぶように売れ、内蔵する半導体も日本製が伸びた。そこに、自国の半導体を売りたい米国がかみつき、日本での外国製半導体のシェアを高める方向性が決まった。「日本メーカーは制約にはめられた。韓国の半導体はそれに合わせてグーッと立ち上がった」
韓国はメモリーに特化して市場に参入してきた。パソコンの普及も追い風となり、日本にかわる「半導体立国」になった。それを支えたのが、皮肉にも日本の半導体メーカーに鍛えられた素材や装置産業だった。
牧本さんは「韓国は効率よく半導体産業を立ち上げるため、素材を自前でやろうとしなかった。日本の素材メーカーも国内で売れなくなったらつぶれてしまう。だから必死で韓国に売りに行った」と話す。
輸出規制の強化は「日本頼み」だった韓国の半導体産業を変えつつある。SMBC日興証券の花屋武アナリストは「韓国企業は素材も国内で作らないといけないというインセンティブ(動機づけ)が強くなった」と指摘する。(大川洋輔)
https://www.asahi.com/articles/ASMCH3DYSMCHPLFA001.html