「日本は韓国に上から目線すぎないか?」と知韓派識者が輸出規制を批判 半導体不足で世界が困る
「徴用工判決」韓国への“経済的報復”が日本へのブーメランになる日
知韓派経営者が警鐘を鳴らす「4つの懸念」 「文藝春秋」編集部
安倍政権は7月4日から「フッ化ポリイミド」など、半導体材料3種類の韓国への輸出規制を発動した。
スマートフォンなどエレクトロニクス製品で国際競争力を持つ韓国にとっては大打撃だ。
昨年10月以降、韓国大法院(最高裁)が日本企業に対し戦時中のいわゆる元徴用工へ賠償判決を下しているが、韓国政府はこれを放置。今回の輸出規制は、こうした対応への事実上の報復措置である。
日本による“経済的報復”は、今後、日韓経済にどのような影響を与えるのか――。知韓派経営者として知られる韓国富士ゼロックス元会長の高杉暢也氏に話を聞いた。
今回の韓国への輸出制限について、日本政府は「(徴用工判決への)対抗措置ではない」という説明をしていますが、その内容を見る限り、事実上の報復・対抗措置であることは間違いありません。
昨年10月以降、「徴用工判決」に何も手を打ってこない、協力して解決しようという姿勢を示してこなかった文在寅政権のやり方に日本政府が不満を抱くことについては、私も当然、理解はできます。
また、日本側の意思表示として、戦略的に何らかの“韓国を懲らしめるための施策”を打つべきではないか、という考え方にも同調できます。しかし、「戦略的」という観点から考えた時、「半導体材料の輸出規制」という手段は、日本側のメリットになるのか。私はその点に非常に懐疑的です。
韓国に対する半導体材料規制について、私は以下の4つの懸念を抱いています。
①今まで一貫して「自由貿易」を推進する立場をとってきた日本が、韓国だけに対してこのような規制をかけることで、国際的な信用度が下がってしまうのではないか。日本は先日、G20の議長国として「自由貿易の重要性」を確認したばかり。その直後に発動する措置としては国際社会に与えるインパクトが大きすぎた。
②韓国の半導体産業は国際的にもリードしている産業。彼らの半導体の生産力が下がることで、国際社会全体で半導体の普及が滞ってしまうのではないか。
③半導体材料を取り扱う日本企業にとって韓国は大口顧客。輸出を制限されてしまうということは、当然、日本企業にも損失がある。あらゆる報道などを含め、現在は「日本企業の視点」が欠けているのではないか。
④韓国が代替品の調達を始めること。自国での調達、別の国からの調達がメインになってしまうと、それは日本企業の競争力を下げてしまうことに他ならない。
日本は“上から目線”になっていないか?
今回の制裁措置を見て、私はこう思わざるを得ませんでした。
「日本には未だに『韓国は遅れている』という先入観がある。今回の措置も、『どうだ、困るだろう?』という“上から目線”の行動になっていないか」
韓国は今や国際競争力を持つ先進国です。当然、「日本には頼りたくない」というプライドも抱いています。今回の半導体材料規制は、そんな韓国のプライドを後押しし、日本が今後の商機を逃すキッカケになってしまわないか――そんな懸念を抱いています。今後の事態の推移を慎重に見る必要があるでしょう。
韓国紙「中央日報」は、今年3月、このような論説を掲載していた。〈日本が韓国の半導体事業などをターゲットに報復措置を取れば韓国企業も当然打撃を受けるが、ここに部品を供給する日本企業にもブーメランのように2次被害が生じる構造ということだ〉
報復がブーメランにならないよう、日本政府には慎重な対応が求められている。
https://bunshun.jp/articles/-/12726