「我々の善良さと正義さは親から継いだDNAに刻まれている」と大統領補佐官が断言 韓国人記者も呆れる
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作家・尹興吉(ユン・フンギル)の小説『腕章』で、主人公のジョンスルは無為徒食の生活から貯水池の監視員になった。給与はごくわずかだったが、その仕事に就いた理由は監視員の腕章が欲しかったからだ。無断で釣りをしていた小学校時代の同窓生とその息子を捕まえ激しく殴った彼は、自分に与えられた少しばかりの権力に酔い、その結果自らを雇った社長にまで反抗的になった。問題が大きくなって解雇された後も、彼は腕章を着け毎日貯水池に行った。何をやっても自分のやることは正しいという妄想から抜け出せなかったのだ。
韓国大統領府報道官は民間人査察疑惑について「文在寅(ムン・ジェイン)政権の遺伝子には最初から民間人査察などはない」と述べた。この種の表現は詩人かお笑い芸人、あるいは腕章を着けたジョンスルのような人間が使うものだ。「自分だけは特別」と考える選民意識は昔から存在するものだったが、現政権はそれがあまりにも強い。
それでも「われわれは正しい」という主張はもう自分たちも言い飽きたのか、今度は「われわれの善良さと正義さは親から受け継いだDNAに刻まれている」とまで言いだした。この政権の集団的な「自分がやったら恋のロマンス、他人がやったら不倫(同じことをしても自分に対しては甘く、他人に対しては厳しく批判すること)」式の発想がどこからきたのか、この言葉から少しはうかがい知ることができそうだ。
外の人間ではなく内部からの告発で疑惑が膨らんでいるのだから、まずは事実関係を解明して説明するのが通常の対応ではないだろうか。「民間人に対する情報収集」と「民間人への査察」は何が違うのかと質問すると「われわれの遺伝子にそんなものはない」と回答するのだから、それなら髪の毛を抜いて遺伝子検査でもやればよいのか。
故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領も大統領候補だった当時「大統領になれば韓国銀行が国債を発行し、大手新聞社を国有化する」と発言したと暴露されると「私の頭の中にそんな概念は最初からない」と述べた。このように「自分たちは骨の髄まで正義」と考えているからこそ、保守系メディアによる合理的な問題提起は「無条件で悪意のあるもの」で、政府を擁護するメディアからの指摘は「建設的批判」という発想が出てくるのだ。
遺伝子まで持ち出して選民意識と純血主義に陥れば、ややもすると非常に危険な害悪をもたらす恐れがある。
白人優越主義の考えから黒人を迫害した米国のKKK、両親がどちらもイタリア系であるべきと考える米国のマフィア、北朝鮮の金氏王朝が語る白頭血統もそうだ。アーリア人遺伝子の優越性を主張したヒトラーが何をやったのか知らないのだろうか。日本の極右集団も何かあればすぐ韓国人と中国人を攻撃し、DNAまで話題にする。
優れた人間は自分を素晴らしいとは言わない。自分だけが正しく善だと考えることがすなわち独善だ。独善を自ら警戒できないときに人は我執に陥る。現政権のやることが正しいか間違っているか、善なのか悪なのかの判断は国民がやることだ。遺伝子まで持ち出して言いたいことを主張しても、最終的にはいつか腕章を奪われ家を追われるだけだ。
韓賢祐(ハン・ヒョンウ)論説委員
ソース:朝鮮日報/朝鮮日報日本語版<【萬物相】韓国大統領府の遺伝子>
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