中国最高のエリート大学が『屈辱的すぎる無知蒙昧さ』を露呈して大問題に。学長が中学生に知識で負ける
■先週、中国で大きな話題を呼んだのは、120周年の記念イベントを開いた北京大学。
注目を集めたのは、学長の記念スピーチでの漢字の読み間違えだ。最高学府のトップが中学生レベルの漢字を読み間違えるという珍事と、その後の謝罪で世間の耳目を集めた。批判や同情、謝罪への賞賛、これを機に読み間違えやすい漢字を勉強しようという前向きな声など、さまざまな反響が入り乱れた。
■晴れ舞台での珍事
北京大学といえば、清華大学と並ぶ中国の最高学府だ。特に理系の強い清華大学に対し、文系ではトップで、多くの著名な学者を輩出してきた。経済に強いとされている李克強首相の出身校でもある。創立から120年を迎える今年は祝賀イベントが盛大に催された。
教育熱心な中国人にとって北京大学はもともと有名観光地の一つ。しかも記念グッズの販売や記念撮影スポットが設置されるとあって、先週、大学構内は人でごった返した。そんな中、4日に盛大に執り行われた記念式典で冒頭の珍事が起こったのだ。筆者は北京大学の同窓生のため、事前にイベントについての案内がメールで送られて来て、大学側の熱の入れようを感じていたし、盛況ぶりについても聞いていた。ただ、まさか母校がこういう形で全国的に話題に上ることになるとは思いもしなかった。
林建華学長がスピーチで「鴻鵠(こうこく)の志」という言葉の直前まで読み進めたところで言い淀み、その後「鴻鵠」を「ホンフー」と読むべきところを「ホンハオ」と読み間違えたのだ。この言葉は『史記』に出てくるもので、大人物の志という意味だ。高校の漢文で習ったという方も多いのではないか。中国の場合、この言葉は中学校で習うため、最高学府のトップにあるまじき初歩的なミスとして話題になった。ちなみに文系の強い北京大学ではあるが、学長は化学が専門の理学博士だ。
全国紙などがまず北京大学の記念式典について報じた際は、盛大に式典が執り行われたという通り一遍の内容を淡々と伝えただけだった。しかし、読み間違えの事実はネット上で瞬く間に広まった。北京大学の学長がこんなミスをするとはどういうことかという批判に加え、スピーチ原稿を自分で書いていないうえに、事前に確認していなかったのではないかと批判が噴出したのだ。
事態を受けての北京大学の反応は早かった。翌5日に北京大学のBBS上に学長から学生たちへの謝罪文を掲載した。「鴻鵠の発音を知らなかった」と認めて陳謝し、文化大革命期に小中学生だったため、ろくな教育を受けられず、教科書もなかったと釈明した。原稿は自分で書いたものだとしたうえで、今後努力はするけれども、短日月に自分の漢字の判読能力を伸ばすのは難しいとした。
謝罪文が出ると、素直に誤りを認めたことを賞賛する意見と、謝罪文が言い訳がましいとの批判の意見が出た。20世紀初頭に学長となり自由の校風を確立した蔡元培や、白話文学の提唱者で終戦直後に学長となった胡適と比較して、学長のレベル低下を嘆く声もあれば、今回の騒動を他山の石に、読み方の難しい漢字をマスターしようという記事もあって、議論百出している。本来それほど注目を集めない120周年が、これを機に大きく取り上げられ、逆によかったという意見もある。
画像:北京大学120周年記念イベントの様子
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http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12749
続く)