日本の独法が『韓国の起源主張』を科学的に完全否定する成果を達成。正体を殆ど解明できた模様
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桜の代名詞で、間もなく開花期を迎える「ソメイヨシノ」。江戸時代に誕生したとされ、一斉に咲き散る姿は壮観だ。最新の科学でその素性がひもとかれる一方、病虫害のリスクを低減するため遺伝的な多様性に目を向ける機運も出てきた。(原田成樹)
■謎残るルーツ
日本には多くの種類の桜があるが、公園や校庭などで圧倒的な数を誇るのがソメイヨシノだ。幕末に染井村(現東京・駒込)の植木屋が「吉野桜」として販売したとされ、花つきがよく、葉が目立たず、成長も早いため全国に広まった。
明治時代に入ると分類学の発展に伴い、奈良・吉野のヤマザクラとの違いが明らかになり、1900年に「染井吉野」の和名が付いた。60年代には雑種だという学説が定着。95年に京都大の研究者らが全国で採取した個体の遺伝子を調べ、全て遺伝的に同じクローンだと分かった。
ソメイヨシノの起源は、母方がエドヒガンであることは知られていたが、父方は長く決着がついていなかった。日本の野生の桜は10種あり、うち4種は近縁のため遺伝子による親子鑑定が難しい。そこで森林総合研究所多摩森林科学園の勝木俊雄チーム長は、遺伝子の目印を複数組み合わせる手法を使い、2014年に父方がオオシマザクラだと突き止めた。
ただ、他種が一部混ざっているという見方も残る。誕生の経緯も人工交配や偶然による受粉など諸説あり、詳しいルーツは謎のままだ。勝木氏は「解明できれば多くの人の関心に応えられるだろう」と話す。
■韓国発祥説を否定
ソメイヨシノについて韓国は、済州島などに自生している「エイシュウザクラ」が発祥だと主張してきた。これに対し勝木氏は17年、花のつき方などの形態や遺伝子を文献で調査し、親子鑑定を実施。母方はエドヒガンで同じだが、父方はオオヤマザクラで異なると判定し、韓国発祥説を否定した。
日本の花見は古来、和歌に詠われたヤマザクラが対象だったが、今ではソメイヨシノが主役だ。接ぎ木による栽培で増えてきたが、クローンがこれほど広がるのは異例だ。どの木も遺伝子が同じで均一の性質を持つため、一斉に咲いて散る演出をもたらす。
学術的な価値もある。開花の様子から、春の訪れが例年より早いかなどを正確に把握できる。開花時期を示す桜前線は、地球温暖化の影響など気象変動の理解にも役立っている。
■病害虫の流行懸念
一方、クローンの弱点として、1つの病虫害が一気に大流行しかねない怖さもある。
ソメイヨシノは、小枝が密集し開花時期に葉が目立ってしまう「てんぐ巣病」という感染症にかかりやすい。多様性を確保し被害拡大を防ぐため、公益財団法人・日本花の会(東京)は05年、長年にわたって続けてきたソメイヨシノの苗木の配布を廃止した。
代わって配っているのは東京・調布の神代(じんだい)植物公園に原木がある「神代曙(あけぼの)」。てんぐ巣病にかかりにくく、咲き方や時期はソメイヨシノに似て、花の色が少し濃いのが特徴だ。
ソメイヨシノは近年、外来種のクビアカツヤカミキリによる被害が拡大。幼虫が幹の内部を食い荒らし突然、枯れてしまう。原産地の中国などから貨物に紛れて侵入したとみられ、環境省が今年1月に特定外来生物に指定した。
枝にこぶができる異変も新たに見つかり、枝を切る対策が始まっている。原因は不明で今後、深刻化する可能性もある。
ソメイヨシノは生育に優れる半面、枝が張って通行の邪魔になったり、根が道路を突き破って出てきたりしやすい。桜は枝を切ると弱りやすく、生活環境の点からもソメイヨシノ離れの動きが広がっている。
例えば横浜市のバス通り沿いにある約1キロの桜並木では、枝が上に伸びて邪魔にならない「ヨウコウ」という品種に植え替え中だ。他の地域でも街路樹を中心に、別の品種への切り替えが進む。
今後、桜の多様化が進めば、日本の春の風景も変わってくるかもしれない。