平昌五輪の不公正さが『選手から”ブーイングの嵐”を喰らう』最悪の情勢に。各国の名立たる選手が次々と脱落
韓国・平昌11日発】平昌五輪で大ブーイングだ。「こんなの中止でしょう」。ノルディックスキー・ジャンプ男子の葛西紀明(45=土屋ホーム)が珍しく怒りの声を上げた。10日夜の個人ノーマルヒル決勝(HS109メートル、K点98メートル)は強風で何度も中断。さらに氷点下10度の中で長時間待たされる劣悪条件となった。104・5メートル、99メートルの合計213・3点で21位に終わったレジェンドも運営面の不備を批判。8度目の五輪の出だしで期待を裏切られた悔しさをにじませた。
五輪の華やかなムードは一瞬だった。午後9時35分、決勝1本目が始まると、懸念されていた強風が首をもたげる。メダルがかかった2本目開始時には気温も氷点下10・5度まで低下。猛烈な冷気が容赦なくスタートを待つ選手を襲った。
懸命に体を動かし、コンディションを整えようとする選手の姿が会場の大型ビジョンに映し出される。見かねた係員が毛布をかけ、マッサージを施す。風が落ち着かないため、助走の合図はなかなか出ない。だが、現場はさらに想像以上に過酷だった。
「もう信じられないですね。風の音がすごいんですよ。気持ちがひるんじゃうぐらいブワァー!となってるんですよね」(葛西)103メートル、102メートルの合計214・7点で20位だった伊東大貴(32=雪印メグミルク)も「これだけ強く吹くと恐怖心もありますし、寒さで体も動かなくなっちゃう」と顔をこわばらせた。
競技が公平に行われたとは言いがたく、風の強弱でコロコロと飛距離が変わった。ソチ五輪2冠のカミル・ストッホ(30=ポーランド)は2本目で風に恵まれず、4位でメダルを逃した。五輪で4個の金メダルを獲得したベテランのシモン・アマン(36=スイス)も風が合わず、スタート位置についたり外れたりを何度も繰り返した末に、11位に終わった。競技終了は日付をまたいで11日となり、開始から実に2時間44分後…。集中力の持続は明らかに困難な状況だった。
強風は当初から問題視されていた。山の上に建設されたジャンプ台は風をさえぎるものがない。防風ネットを張り巡らせたものの、過去には負傷者も出している。夜なら風が収まるとの判断は、見込みが甘かったと言わざるを得ない。選手は命がけのジャンプをするしかなかった。
寒さに耐え切れなくなったのは観客も同じだ。1本目が終わると、関係者と一部のファンを除いたほとんどの観客は出口に殺到するように帰ってしまった。盛り上がりという部分で、本来の五輪とかけ離れた舞台になったことは否めない。
16日に予選が始まる個人ラージヒルには、怜奈夫人(33)と長女の璃乃ちゃん(2)が観戦に訪れる予定だ。しかし葛西は「こんな寒さだったらすぐ帰します」と不安げに語った。
ジャンプ台は女子やノルディック複合でも使用される。1年前のプレ大会では、いずれの種目からも強風に対する不満の声は上がっていた。気象条件に左右される競技とはいえ、選手の安全が確保されてこそ、感動や興奮を共有できる。対策を怠っていたとすれば組織委の責任で、葛西の訴えは重く響く。
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