【イーロン・マスク】EV化の流れの中で 人となりとテスラの行く末・・・
そんな世界情勢の中で、テスラが窮地に陥っているようだ。「モデル3」の生産が軌道に乗らず、資金不足に陥る中で、EVトラック「セミ」と新ロードスターを発表している。新ロードスターにおいては、2年余り先の納入でありながら2840万円ほどを先に払わなければ買えないようだ。EVトラック「セミ」は、およそ57万円で予約できるようだ。資金集めの策と言われている。
「大ぼら吹き」とも言われているイーロン・マスクの“人となり”から見える、テスラモーターズの先行きを考えてみよう。
■起業家に共通する性格
イーロン・マスクが「大起業家」と騒がれているのは、昨年、一時GMを凌ぐ時価総額を記録したことなどからであろうか。また仕事の進め方などでは、アップル創業者のスティーブ・ジョブスに大変似た様子が見える。つまり無理な目標を掲げ、強引に達成していく手法で、他者の立場、つまり社員の立場などは「おかまいなし」ともとれる姿勢だ。
これは「起業家」には多い性格で、これがないと大事業は成り立たないのかもしれない。社員のクビを切ることは、まるでなんとも思わないかのようだ。
よく似た起業家では本田宗一郎が思い浮かぶ。IT業界では、スティーブ・ジョブスは、一旦起業したアップル幹部から追い出され、再び戻ってくるなどの経歴があった。これらの大起業家の人物像を比べて、「業種と性格の違い」に注目したい。
■業種による差・「ソフト開発は平面的」
時代の差なのか、「自動車業界の本田宗一郎・イーロン・マスク」と、「ソフト業界のスティーブ・ジョブス・ビル・ゲイツ」の差がある。この業界の差はかなりの問題を生むであろう。
ソフト業界は、自動車業界と比べれば「平面的」世界である。知識集約型とはいいがたい、意外に単純な業種である。そのため、開発と言っても関係する要素が少なく、理解しやすいのかもしれない。ソフトウエア開発技術の進歩ではモジュール別開発(MDB)など進歩はあるが、製造業に比較するとはるかに平面的だ。
このためソフト開発では「無理な目標を掲げ、達成でき」ても、自動車産業では達成できないことが多く起こる。
例えば、「工場を作る」ことにおいても、外見的に設備が整っても、その「設備の置き方」が「時代遅れ」になっているのかもしれない。イーロン・マスクが「トヨタ生産方式」を知らぬはずはないのだが、革新的部分でない「個別の製造技術」などは「匠の技」の世界であることを知っているのだろうか。ましてロボット作業に置き換えるにも、「匠の技」が基本であることが理解できているとは思えない。
「モデル3」の生産が極端に遅れているのは、「スポット溶接」がうまくいかないためだと言われている。これまでアルミなどの材料でボディを造っていたのを、コストダウンを考えて「モデル3」では鉄鋼に変えたため、スポット溶接が必要になった。これまでアルミでは経験していない製造技術なので、うまくいっていないと言うのだ。
真偽はともかく、職人技の世界においてはどれほど勉強しても経験がないのでは、どうにもならない。トヨタはロボットに仕事をさせることが進み、その基礎となる「匠の技」を失うことを恐れて、手作業で行う学校を開設している。テスラがこの重要性に気付くには、幾度となく現場で問題が出なければわからないだろう。
このようにソフト開発とは次元の違う厚みが自動車産業にはあり、「品質保証体制」などにおいても現場で働く人間の「心構えの問題」があり、イーロンの「人の使い方」では構築出来まい。それはテスラ車の完成後修正車両が9割に上ると伝えられる現状から見えてくる。この弱点を克服できるのか?テスラは正念場に差しかかっている。
http://www.zaikei.co.jp/article/20180101/418108.html