中国の風習「陰婚」が『凄惨すぎる悪夢の事件』を頻発させている模様。悍ましい犯罪行為がまかり通っている
遼寧省大連市郊外にある葬儀場。死体を使ったビジネスが横行し、墓泥棒どころか殺人事件まで発生した
ついにこんな凄惨(せいさん)な事件まで起きてしまった。
恐ろしい事件の扉が開かれたのは、2015年12月4日のことである。
山西省晋中市左権県東溝村に暮らす一軒の農家から、「隣の家から腐ったような異臭がする。もう何日も収まらない」という通報が地元公安当局に寄せられたのだ。
場所は、レンタル倉庫として貸し出されている空き家だった。
地元公安の捜査員が駆けつけると、確かに戸外まで悪臭が漂ってきている。明らかに何かの死体と分かる臭いだったため、捜査員らは強制的に門を破り屋内に入った。
そして、強い悪臭を放っている床の板を剥がしてみると、床下にあったのは腐敗の進んだ若い女性の死体であったという。
死体発見をきっかけに幕を開けた殺人事件の捜査では、広域にわたる捜査(呂梁、陽泉、太原、忻州、朔州、長治、大同、内モンゴルなど)が行われたのだったが、その結果、見えてきた事件の背後には「陰婚」がかかわっていることが次第に明らかになっていくのだった。
陰婚。そう聞かされても日本人はピンとこないに違いない。
これは不慮の事故などで早世した子供の両親や親族が、同じように若くして死んだ異性の死体をどこかから調達してきて、死後に婚姻の儀式をとり行うという風習のことだ。
「陰婚」とも「冥婚」とも呼ばれている。
彼らが陰婚にこだわるのは、結婚もせず、若くして死んだ無念が霊となってさまよい、自分たち一族の子孫に悪さをすることを恐れているためだ。ここでいう「悪さ」とは、子供が授からないとか、子供が生まれてもその子にさまざまな災いが降りかかる-といったことだ。
そんなことにならないために死後であっても、相手をさがして結婚式を行い、霊を慰めることが大切だと信じられているのだ。
迷信めいたこんな風習が現代中国にも色濃く残っているのには驚かされるが、実際に死体のニーズが絶えることはなく、墓を掘り返して死体を盗む犯罪や犯罪グループがなくなることはない。
事実、中国の新聞や雑誌には必ず一定の頻度で、この陰婚や死体窃盗に関するニュースが見つかるのである。
中国人がいまだ火葬を嫌い、法を犯しても土葬にこだわるのには、この問題も影響しているとされる。
だが、今回の事件が一線を越えていると感じられるのは、死体を欲しがっている者たちに、死体を提供するのではなく、わざわざ殺していた点にある。つまり死体という商品を造るための殺人だ。こんな恐ろしい犯罪に手を染めて、犯人は一体いくらの報酬をもらっていたのか。
分かっているのは、冒頭の事件で死体を手に入れるために殺人まで犯した男がかつて死体を一体わずか2万2000元(約37万8620円)で売っていたことだ。なんとも救われない話である。
■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160330/frn1603301550002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160330/frn1603301550002-n2.htm