テレビ朝日の新ドラマが『テレビ局を軒並み震撼させる』喜劇が発生。見たくない現実を直視する羽目に
中高年がターゲットのシルバータイムドラマ、倉本聰脚本の『やすらぎの郷』(テレビ朝日)の視聴率が好調でテレビ各局がおびえている。
なぜおびえているのか。
テレビで高視聴率を稼ぐには中高齢の視聴者をターゲットにしなければならない」ということが証明された形である。これが証明されると、テレビ局は困るのである。なぜか?
テレビ局自身も若者のテレビ離れなどには気づいている。しかし、それをおおっぴらにすることには強い抵抗がある。理由は、スポンサーからの要請があるからである。
スポンサーは購買力のある若い層に訴えたいはずだ。見ている人が、金を持っていても、物を買わない年寄りばかりでは困るはずだ。だから、編成局などが旗振り役になって子供を除いた59歳以下を「コアターゲット」などと名付けることになる。ただし、「コア」からはずれてしまった還暦を過ぎた筆者などの年齢層は当然、気分がよくない。
かくして、テレビ局はこれらコアターゲット層の視聴者獲得に全力を上げています、と電通及びスポンサーに猛烈アピールすることになる。
実際の視聴率は若者離れを隠しきれない。大相撲が場所中だと視聴率のトップ20のうち15を大相撲〇〇場所初日から千秋楽の15日が占めてしまう勢いなのである。
フジテレビの視聴率の凋落が激しい。これに対して、「見ているのが年寄りだけなのに、若者に向けて番組を作っているからだ」という議論がるが、これは間違いである。実際はもっと深刻で、「若者に向けた番組ばかり作るテレビ局とのイメージが染み付いて固定してしまったからで視聴率が上がらない」のである。
フジテレビには、年寄り相手だなと思う作りの番組もある。しかし、そういった番組を新しく始めても、年寄りは保守的だから、チャンネルをフジテレビに合わせようとは思わない。結果、フジテレビに視聴率は流れない。イメージはは実際より強力なのだ。
視聴率はスポットCMの売上と連動するので、テレビ局は儲けのために当然ながら視聴率が欲しい。それには中高年に見てもらわなければならないとは分かってもいる。しかし、スポンサーは「年寄りの視聴率はいらない」という。スポンサーにとっては年寄りで視聴率を取ったとしても「CM料金が高くなる割に、見ているのは年寄りだけというのでは、テレビCMは踏んだり蹴ったりのカネ食い虫だ」となってしまうからだ。
だからこそ、見せかけの若者狙いの猛烈アピールになるのだろう。
こういった視聴ターゲットによる番組の選別が、面白さによる選別とは全く関係ないことに現在のテレビの病根がひそんでいるのだと筆者は思う。『やすらぎの郷』は、夜のゴールデンタイムには若者向けのドラマが数多く放送され、大人の観るドラマが少ないという現状に対し、大人のためのシルバータイムドラマがあるべきだという倉本が企画。その提案を受けて決まったものだ。