朝日新聞が「マスコミに触れない人間はバカになる」と盛大に自画自賛 ニュースを見ない学生の知識水準は低い
「近年、学生の学力の低下が著しいです。ご自身が学生だった当時の感覚で講義を実施すると、講義を全く理解できない学生が多数いることに注意された方がよいと思います」
2018年4月、母校である立命館大学国際関係学部の教授に就任する際、あるベテラン教授からそんな助言をいただいた。本当にそうなのだろうか?そんな疑問を胸に教壇に立つようになって1年8カ月。見えてきたことがある。(白戸圭一)
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「安倍首相は再登板」知らない学生
私は30年以上前の1989年4月に入学し、93年3月に卒業した。昔のことなのではっきり覚えてはいないのだが、当時の立命館大学国際関係学部の偏差値は、たしか60台の後半から70くらいだったように思う。この30年間で、母校の偏差値はどうなったのか?
そこで、2019年版の教育産業各社の偏差値ランキングを眺めてみた。すると、模擬試験を実施している会社によって偏差値は微妙に異なるが、30年前と比べて大きく下落したようには見えない。少なくとも、大学受験という意味においては、入学してくる若者の偏差値レベルが大きく低下したということではなさそうである。
だが、教壇に立つ中で、思わず「え?」と声を上げてしまったことはある。ある講義で、安倍政権が時々スキャンダルに見舞われながらも一定の支持率を維持し続けている理由について考察した時のこと。私は「安倍晋三首相が1度目の政権での失敗を教訓にしながら政権運営していることも、支持率維持の理由の一つではないか」という趣旨の話をした。
その時、私は何人かの学生の顔が「教授が何を言っているのか分からない」と訴えかけているのを察知し、念のために「安倍首相は2006年から2007年に1度首相を務めています。現政権は2回目の登板であることを知っていますか?」と学生たちに尋ねてみた。
私の勘は的中した。何人かの学生は、安倍首相が再登板である事実を知らなかったのである。それを知らなければ、現政権が支持率を維持し続けている理由について考察する講義そのものが成立しない。
またある時、私は外交政策と世論の関係についての講義を試みた。問題を考察するための事例として取り上げたのは、小泉純一郎首相の北朝鮮訪問によって拉致被害者が帰国した際の日本国内の世論であった。だが、この時も、想定外の事態が起きた。小泉純一郎という首相が存在した事実そのものを知らない学生がいたのである。
もし、このレベルの学生に講義を理解してもらうのならば、小泉氏という人物の存在を説き、同氏が北朝鮮を訪問した最初にして唯一の日本の首相である事実を説き、拉致被害者の存在を説明し――と話を続けざるを得ない。
時事ニュースに触れる人と触れない人、広がる格差
こうなると、もはや「外交政策と世論の関係の考察」どころではない。当初こちらが計画した水準の講義に到達するまでに、何時間必要なのか見当もつかない。この時はさすがに、冒頭のベテラン教授の言葉を思い出し、確かに30年前、自分がこの学部の学生だった時にはあり得なかったことが起きていると思わざるを得なかった。
このようなエピソードを並べていくと、「小泉政権や最初の安倍政権が存在した当時、今の大学生はまだ小学生だったから、知らなくても仕方ないではないか」という擁護の声が出てくるかもしれない。
しかし、安倍首相が再登板である事実や、小泉進次郎環境相の父親が純一郎氏である事実など、彼らが高校生・大学生になって以降発行された新聞や雑誌にいくらでも書かれ、テレビでもさんざん報道されている。日本政治について小学生時代には知らなかった彼らも、大学生になった今はいくらでも情報を集めることが可能である。
その証拠に、安倍首相の再登板や小泉氏の北朝鮮訪問について、正確に認識している学生も多数存在している。本稿の冒頭で「学生の学力の低下が著しい」というベテラン教授の言葉を紹介したが、正確には「同じ大学の同じ学部の学生の間で、知識・情報格差が昔とは比べ物にならないほど拡大している」というのが実情だろう。
<略>
国民はメディアについての選択肢を持たなかった代わりに、子供は親が購読している紙の新聞を子供のころから拾い読みし、親が見ているテレビニュースが半ば自動的に視界に入ることで、自らの幼少期や誕生以前の出来事についても知識・情報を獲得していた。インターネットの発達以前のマスメディアは、例えて言えば、これさえ食べていれば栄養バランスだけは保証できる定食のようなものだったといえるかもしれない。それは、多くの国民が知的な面で脱落していくことを防ぐ「知のセーフティーネット」「情報のプラットフォーム」だったと言えるだろう。
12/21(土) 11:34配信 GLOBE+ 全文はソース元で
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